1010322(0) 水戸芸術館「内藤礼~明るい地上には あなたの姿がみえる~」最終日に滑り込んだ。
 広島市出身の内藤礼さんは豊島美術館の“母型”やそこを訪れた人々を追うドキュメンタリー映画「あえかなる部屋 内藤礼と、光たち」などで注目されている現代美術家。
 ビーズ、糸、空き瓶、水、木、自然光を素材として展示室ごと作品化し、これ以上ないと思えるほどの繊細な空間をつくりだしていた。人工照明を一切使用しないため天候や日の傾きによって採光窓からの光がさまざまな陰翳をもたらし、これも惹きつける。最終日とあって多くの人々が詰めかけていたが、ゲストさえも各ブースの中に包み込まれ溶け込んでゆくような光景の奇跡に心が震えた。ここに足を踏み入れて、拒まれたと感じる者はいないのではないか。木製のベンチに座ってしばらくじっとしていたら、これまで生きてきた時間が作用しふっと作品の向こうに自分が現れた。それはちょっぴり緊張感も伴いながら実に心地よい感覚だった。
 すべての命にたいする歓待と抱擁。それが内藤さんの創造の根源にあるように思う。
 会場で内藤さんにお会いし少しだけお話しをした。飾らない人柄が伝わってきた。いつか瀬戸内の豊島美術館を訪れてみたい。

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