ぼくは新聞や雑誌の書評を読むのが好きだ。おかげで本の山が枕元まで侵食してきて今や雪崩寸前である。
書評するって、対象の本をかりて自分を語ることでもあるんだなとあらためて。
ふだん口に出しにくい不安や憤りも、例えば小説の登場人物に託したなら吐き出してしまえることだってあるだろう。
そんな一行を見つければこちらも共振して、紹介されている本につい手が伸びてしまう。
小泉今日子さんが読売新聞の書評委員としてこの10年間に書かれてきた97冊分の書評が集められている。
かつてのアイドル、現在俳優としての小泉さんはこの本の中にはいない。浮かび上がってくるのは「生きることは恥ずかしいことなのだ。私は今日も元気に生きている」と言い、ぼくらと似た悩みを持ちながら自分自身と真摯に向き合う一人の読書好きな女性の姿とその日常だ。
キョンキョンがとても身近に感じられたし、取り上げられた本も、もちろん読んでみたくなった。
人は一冊の本を媒介にして緩やかに繋がれるのだ。
より多くの人に本を手にしてもらうためにも書評文化を根付かせることは大事だ。
また、ビブリオバトルに象徴されるように学校の感想文も、より楽しくてそのうえ個々の表現が求められるこちらの方へとシフトしていったらどうだろうかとも思った。