読み終えたばかりの本を眺めるのが好きだ。
思わず力が入ったり、読み返したページは開き癖がついていたり皺が寄っていたりする。自分がつけた足跡を見ながらストーリーをたどり返すのも楽しい。ふと、人生もそうかなあなんて思う。癖のある人生。なんてな。
真冬の外遊びから帰宅して炬燵に足を突っ込んだときのつま先から体だがじんわりと温まっていく懐かしい感覚。『キネマの神様』(原田マハ)はそんな小説。ダメダメな連敗続きの人生に一条の光が差したとき、その光は本人だけでなく家族や周囲の人々をも照らし温める。
光源は子どものころから夢中で見続けた無数の映画、そして町々の小さな映画館。
ラスト。名画座でかけられる作品はぼくも大好きな一本で、出だしのシーンが脳裏の銀幕に投影され図らずも涙腺がゆるんでしまった。神様は映画を愛するすべての人の心ではなかったか。
原田マハさんいいなあ。
ああ映画館行きたい。そしてキネマの神様、ゴウちゃんが他人と思えないオレにも光を。