どうしたんだ日記

Resonating with the landscape

2020年12月

『蒼い時』

蒼い時 昨日ある用件で鈴木瑞穂さんと電話で話した。ふとしたきっかけから自伝や伝記の話題になった。俳優の自伝も数えきれないほど読んできた読書家が一番に推すのは山口百恵さんの『蒼い時』だった。
 共演したドラマ「赤い絆」の撮影当時、百恵さんはこの執筆を依頼されて書こうか書くまいか迷っていたらしい。引き受けたならば過去も現在もさらけ出し、嘘偽りのないものにしたいとの思いから相当の覚悟が必要だったのだ。瑞穂さんは書くことをすすめ様々なアドバイスもされたという。一分の気取りもなく、肉親の愛憎と痛み、性、結婚、仕事などすべてあるがままに綴られたこの一冊こそ自伝の白眉だと、電話の向こうの名優があのバリトンで話す。さっそく手に入れて読み始めた。
 書き出しから引き込まれた。どのページからも百恵さんの覚悟と潔さが伝わってくる。同時に人間性も。おそらく百恵さんはこの本を出したことで世間に着せられたスターという重くて窮屈で通気の悪い衣装を脱ぎ捨てたのだ。文庫で40年に渡るロングセラーとなっているのもうなづける。「文は人なり」は至言である。

春を待つ沈丁花

春待つ沈丁花 青年たちが企画した27日の学生向けフードバンク(食料の無料配布)は、用意した120食分すべてを配布することができた。時間にして80分だった。11月初めにやろうと決めて約一か月半、募金も食料の寄付も予想をはるかに上回る額と量が寄せられた。
 今回対象とした若者の苦境はなにもコロナ禍が生んだのではない。広がる一方の経済的格差が新型ウイルス感染の拡大によって顕在化したものだ。同時に行った対話アンケートでは「シフトが減り給与が減った」「趣味や遊びの機会の喪失」「心身の健康の悪化」などの回答がみられた。
 学生・若者だけでなく子連れの若い保護者、劇団員、高齢者も多数利用してくださった。「こういうのやってもらえると本当に助かります」そんな声を複数聞いた。
 
 今回お米は5合ずつ配布したが230キロ以上寄せられたうちの半分に満たない。宣伝を打ったと同時に目の前に積みあがってゆく食料や生活必需品に一番驚いていたのは言い出しっぺの青年たちだ。自分たちが手を挙げたことに対して大勢の人々が賛意を示し、協力してくれることに驚き、感動し、奮い立った。そこから一層この取り組みにのめり込んでいった。そんな姿を目の当たりにしたぼくらおっさんやおばさんも元気になった。こいつらのために(言葉が悪くてすみません、でも本当にそう思ったのです)やらずにいられるか!という気持ちになった。その気にさせてくれた彼らに感謝しながら毎晩のように地域を定めてポスティングした。どう援助していくかのミーティングも頻繁に持った。ある年配の方は「私も苦学生だったからほうってはおけない。若い人は希望だから」と言って、お米と缶詰とカンパをくださった。
 
 すでに青年たちは次を計画している。今度はもっと積極的に対話をしたいと練っている。もともと自分と同じように生きづらさや困難を抱えている人たちとつながりたい、仲間を増やしたい、現状を変えたいという思いで立ち上げたからだ。
 
 当日お手伝いいただいた30名ほどのボランティアの方たちからも、若い人が頑張っているのだから力になりたいという声が少なくなかった。味方はこんなにもいるのだ。いっしょにたくさん失敗して、人とぶつかって繋がって、たくさん学んで、その先で何かを掴みとりましょう。

ぴゃん直かぶら寿司

かぶら寿司 ぴゃんからクール便で自家製のかぶら寿司。すでに匠の技と域。ありがとありました。もう一つ旨いものは大塚駅南口の老舗千成屋のどら焼き。これまで食べた中でベスト3に入ると思う。





千成屋どら焼き

劇団民藝+こまつ座「ある八重子物語」

ある八重子物語 東京芸術劇場シアターイーストで。
 ほんとうは新劇に行きたかった水谷八重子さんは新派で伝統的な女形と相対し、その所作をあえて取り入れるなど独自の女優像を創造し確立した。作者の井上ひさしさんによるとそれは女役者ではなく女優であることにこだわりつづけ、自分を貫いた水谷さんの戦さだったという。(パンフレット所収「八重子さんの戦さ」)
 
 開戦直前から敗戦直後にかけての柳橋は古橋医院が舞台。熱烈な水谷八重子贔屓の院長先生と医院に集う芸者衆とその身内、さらには通院する女形も加わってそれぞれの悲喜交々をコミカルに。やはり新派にとりつかれた看護婦、お手伝い、事務員のトリオが新派がかった?立ち居振る舞いと絶妙の掛け合いで盛り上げる。
 
 テンポがよく二度の休憩をはさむ3幕3時間弱は早かった。気がつけば出てはこない八重子の生き方に客席も含めたみんなが背中をそっと押されている。井上さんの巧さだ。最後は柳橋の欄干に凭れて遠くない春を思うような気分に浸りながら劇場を後にした。やっぱり芝居はこうでなくちゃ。院長の篠田三郎さんは昔と変わらず若々しかった。

つぼみと冬の陽

お金の生る木 (1) カネノナルキがいっぱい増えた。年明け早々に実入りの良いアルバイトを頼まれた。貧乏所帯には嬉しい。
 名奉行と謳われた大岡越前守忠相はどうも加藤剛さんみたいなイケメンではなかったようだ。井上さんの表現を借りると「縦よりも横に広い、ちょうど茶釜のような顔で愛嬌よく…」「顔に合わせて体格もでっぷりとしている」という具合。無類の書物好きであり、お裁きの助けをお上の御文庫から得ることも多かった。その陰には書物奉行の存在と奮闘があった。
 書物奉行とは上様の御文庫を管理運営するいわば二本差しの司書。この少旗本ニ百石の重要な仕事に「風干」がある。年に一度、御文庫の庭でする蔵書の虫干しである。実はこれが大変。梅雨明けと同時に始めるのだが日中雨が降らない保証はない。万が一御書物を濡らせば処分もので、風干は命がけだ。
 晴れ渡る日にも通り雨はある。ある年その大敵通り雨が虫干し真っ最中にやって来たからさあ大変。若かりし日の奈佐勝英がもはやこれまでかと青い顔で干場へ駆けつけてみると、そこには横に広い体で書物を覆うようにうつ伏せている忠相の姿があった。
 三つの連作短編は隠居した奈佐の回想という形式で進行する。「秘本」に惹かれて今日読み始めた。本の虫オールタイム日本代表の井上さんならではの着想が冴えている。
 山本周五郎も池波正太郎も藤沢周平もそうだが時代小説を読むとどうしてか自分が分別と情ある懐の深い人間になったような気がしてくる。もちろんかんちがいであるがこれは魅力だ。
秘本大岡政談









つぼみと冬の陽射し










大丈夫かな

 お世話になっているSさんはよくラインをくれる。決まって深夜から明け方にくれる。政局のニュースや、せやろがいおじさん、小池都知事のものまねをする清水ミチコさんのYouTube動画などが長いコメントとともに送られてくる。社会や政治の動向を常に注視する活動家らしい内容だ。
 ところがである。最近Sさんから売れっ子占い師(だそうだ)の動画が頻繁に送られてくるようになった。「この占い師はほんとうに凄いです!私の半生も性格も見事に言い当ててます!だまされたと思って一度みてください!」。あれ、Sさんは唯物論者だったはず。大丈夫かしら、と心配していたところ、昨夜はさも大発見であるかのような得意げなスタンプとともにとうとうこんなのがきた。

「…ところで、誕生年の西暦に年齢を足すとぜんぶ2020になるって知ってましたかあ!?

 知ってるけど。大好きな芋焼酎の飲みすぎだろうか。いつも頼りにしているだけに気になる。

咲きました。

咲きました

和菓子でクリスマスイブ

和菓子でXmas 手前から時計回りに、クリスマスツリー、鈴の音(ね)、ノエル。








♬ I hope you have fun
   The near and the dear one
   The old and the young 
DSC_0232

もう少し

もう少し あたたかい冬の日差しに蕾がほぐれてきた。もう少しだ。がんばって。
 と、言いながらぼくはよく植物の写真を演出するのだ。“ヤラセ”というか。南国生まれのハイビスカスも寒い朝いきなり外に出されて迷惑至極だろう。何も言わないのをいいことに。




演出その2 (2)

ナイン

ナイン 四谷新道、柳橋、門前仲町、新宿、晴海通り、乃木坂、上野公園…。
 東京の地図を片手に読んだ小さなどんでん返しの小さな物語集。井上さんの実体験がベースになっているのだろう。確かにそこにあった人々のささやかな暮らし、人情の機微への賛歌。珠玉。